式の計算の利用~計算を楽にする~

例えば \(71×71\) はいくつになるでしょうか。筆算を使えば計算できるでしょうが, 暗算をするとなると少し難しいと思います。また, \(75^2-25^2\) は多少計算が大変です。

これをもっと速く簡単に計算できる方法があります。それが乗法公式を利用することです。乗法公式を利用することによってどのように計算が楽にできるか見ていきましょう。

目次

乗法公式を利用した大きい数の計算

\(82^2, 102×98, 85^2-15^2\) を例に計算していきましょう。

\(82^2\) は乗法公式2 \((x+a)^2=x^2+2ax+a^2\) を利用すると,

\(82^2=(80+2)^2=80^2+2×80×2+2^2=6400+320+4=6724\)

102×98は 乗法公式4  \((x+a)(x-a)=x^2-a^2\)  を利用します。\(x=100, a=2\) とすると,

\(102×98=(100+2)(100-2)\) と計算できるから, 

\(=100^2-2^2=10000-4=9996\)

\(85^2-15^2\) は展開公式4  \(x^2-a^2=(x+a)(x-a)\) を利用して

\(85^2-15^2=(85+15)(85-15)=100×70=7000\) と計算できます。

式の値とは何か

x=2 や, a=-4 のように, 文字と数字が等号(イコール)で結ばれている場合, 数字の部分を\(\color{#65FFC4}{文字の値}\)といい, 文字を文字の値に置きかえることを代入するといいます。与えられた式において, 代入により計算した値のことを\(\color{#65FFC4}{式の値}\)といいます。

式の値を求めるときには, まず式を簡単にしてから, 代入を行うと計算が楽になることが多いです!(そうなるように問題が作成されています。)

例 \(x=-2, y=\displaystyle\frac{1}{2}\) のとき, \((3x-y)^2-(x-7y)(x+y)\)

これを最初から, このように \(\{3×(-2)-\displaystyle\frac{1}{2}\}^2-\{(-2)-7×\displaystyle\frac{1}{2}\}\{(-2)+\displaystyle\frac{1}{2}\}\)  とすると, 計算が大変です。特に分数がある場合は計算を投げ出したくなります。そこで, 最初に  \((3x-y)^2-(x-7y)(x+y)\)  を計算します。

展開公式3 \((x-a)^2=x^2-2ax+a^2\) より,  \((3x-y)^2=9x^2-6xy+y^2\)

展開公式1 \((x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\) より, \((x-7y)(x+y)=x^2-6xy-7y^2\)

これより,  \((3x-y)^2-(x-7y)(x+y)=9x^2-6xy+y^2-x^2+6xy+7y^2=8x^2+8y^2\)

最後に, 整理した式  \(8x^2+8y^2\) \(x\) に \(-2\) を, \(y\) に \(\displaystyle\frac{1}{2}\)  を代入します。

\(8×(-2)^2+8× (\displaystyle\frac{1}{2})^2=8×4+8×\displaystyle\frac{1}{4}=32+2=34\)

因数分解を利用した問題については練習問題を行えば十分だと思われますので, ここでは最もわかりづらいところにピックアップして解説していきます。

\(x+\displaystyle\frac{1}{x}=m\) が与えられたときの  \(x^2+\displaystyle\frac{1}{x^2}\) の式の値の求め方

\(x+\displaystyle\frac{1}{x}=-2\) を例に考えていきます。

両辺を2乗すると,  \((x+\displaystyle\frac{1}{x})^2=(-2)^2\)

展開公式2 \(x^2+2ax+a^2=(x+a)^2\) を用いて左辺を展開します。すると,

(左辺)\(=x^2+2×x×\displaystyle\frac{1}{x}+\displaystyle\frac{1}{x^2}=x^2+2+\displaystyle\frac{1}{x^2}\)

(左辺)=(右辺)より,  \(x^2+2+\displaystyle\frac{1}{x^2}=4\)

よって,  \(x^2+\displaystyle\frac{1}{x^2}=2\)

\(-2\) のところを \(m\) に置きかえることによって,  \(x^2+\displaystyle\frac{1}{x^2}=m^2-2\) であることがわかります。

\(x+y=a, xy=b\)  が与えられたときの式の値の求め方

例をもとに考えていきます。

\(x+y=3, xy=-1\)  のとき, \(x^2+2xy+y^2\) の式の値を求めなさい。

\(x+y=3, xy=-1\)  のとき,  \(x^2+y^2\) の式の値を求めなさい。

\(x+y=3, xy=-1\) のとき, \(x^2-2xy+y^2\) の式の値を求めなさい。

\(x^2+2xy+y^2\) の式の値の求め方

因数分解の公式2より,  \(x^2+2xy+y^2=(x+y)^2\) であるから,

\(x^2+2xy+y^2=(x+y)^2=3^2=9\) よって, 式の値は9です。

\(x^2+y^2\) の式の値の求め方

\(x^2+2xy+y^2=(x+y)^2\)を利用します。左辺を\(x^2+y^2\)  にするために, 両辺に−2xyを足します。

\(x^2+y^2=(x+y)^2-2xy\)

\(x+y=3, xy=-1\)を代入すると, \(x^2+y^2=(x+y)^2-2xy=3^2-3×(-1)\)

\(=9+3=12\) よって, 式の値は12です。

\(x^2-2xy+y^2\) の式の値の求め方

因数分解の公式3より,  \(x^2-2xy+y^2=(x-y)^2\)となりますが, 実はこの式変形では解くことができません。なぜなら文字の値\(x+y=3\) が使える形ではないからです。ここでできる子とできない子の境界線になるので, 頑張って理解していきましょう。

ここで,  因数分解の公式2   \(\color{magenta}{x^2}\color{blue}{+2xy}\color{magenta}{+y^2}=(x+y)^2\)・・・①

と因数分解の公式3     \(\color{magenta}{x^2}\color{blue}{-2xy}\color{magenta}{+y^2}=(x-y)^2\)・・・② を見比べてみましょう。

青色部分が共通していて, ピンク色の部分が違うところです。青色部分を➀ー➁をすることによって, 消去でき, \(x+y\) と\(xy\) のみで表すことができそうです。

➀-➁をすると, \(4xy=(x+y)^2-(x-y)^2\) よって, \(x-y)^2=(x+y)^2-4xy\) と計算することができます。

これより,  \(x^2-2xy+y^2=(x-y)^2=(x+y)^2-4xy=3^2-4×(-1)=9+4=13\)

ちなみに, ➀+➁をすると, \(x^2+y^2=\displaystyle{1}{2}\{(x+y)^2+(x-y)^2\}\) となり, \(x+y\) と \(x-y\) が与えられた場合はこちらを用いることになります。 

まとめ

・式の値を計算するときは, 式の同類項をまとめて式を簡単にしておきます。

・共通因数があったり因数分解の公式が使える場合は因数分解を行います。

・\(x+y=a, xy=b\) が与えられているときは, 
\(x^2+2xy+y^2=(x+y)^2=a^2\)
\(x^2+y^2=(x+y)^2-2xy=a^2-2b\)
\(x^2-2xy+y^2=(x+y)^2-4xy=a^2-4b\)

・\(x-y=c, xy=d\) が与えられているときは, 
\(x^2+2xy+y^2=(x-y)^2+4xy=c^2+4d\)
\(x^2+y^2=(x-y)^2+2xy=c^2+2d\)
\(x^2-2xy+y^2=(x-y)^2=c^2\)

これは, 覚えておくのではなく, 与えられた文字の値をうまく使うためにはどういう式変形をすればいいのかを考えることが大切です。練習問題でしっかり理解していきましょう。

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