実数の基本事項
復習
実数 a については a>0, a=0, a<0 のうち, どれか1つの関係だけが成り立ちます。 a>0, a<0 を合わせて特に a≠0といいます。 不等式の性質 a>b, b>c ⇒ a>c・・・① a>b ⇒ a+c>b+c, a-c>b-c・・・② a>b, c>0 ⇒ ac>bc, \displaystyle\frac{a}{c}>\displaystyle\frac{b}{c}・・・③ a>b, c>0 ⇒ ac>bc, \displaystyle\frac{a}{c}>\displaystyle\frac{b}{c}・・・④ |
上の実数条件と不等式の性質4つを使って, 以下の性質を証明していきます。教科書や参考書では省略されていて厳密性が失われている場合がありますので注意してください。
実数の大小関係
2つの実数 a, b については a>b, a=b, a<b のうち, どれか1つの関係だけが成り立ちます。 |
(証明)
2つの実数 a, b において, a-b も実数である。 実数 a-b について, a-b>0, a-b=0, a-b<0 のうち, どれか1つの関係だけが成り立ちます。
a-b=0 に関しては, 移項をすることにより, a=b が得られます。
a-b>0 , a-b<0 に関しては, 両辺に 実数 b を加えると, ➁より,
a-b+b>0+b , a-b+b<0+b
すなわち, a>b , a<b
よって, a>b, a=b, a<b のうち, どれか1つの関係だけが成り立つことが示されました。
毎回不等式の性質を使うのは面倒なので, 下記の内容を新たな性質にします。
実数の大小関係と差の正負
a>b ⇔ a-b>0 a<b ⇔ a-b<0 |
実数の平方と平方の和の符号
実数 a について a^2≧0 等号成立は a=0 のときのみ 実数 a, b について a^2+b^2≧0 等号成立は a=b=0 のときのみ |
(証明)
実数 a については a>0, a=0, a<0 のうち, どれか1つの関係だけが成り立ちます。
a>0 のとき, 両辺に a をかけると, ③より, a×a>0×a すなわち, a^2>0
a=0 のとき, a^2=a×a=0×0=0
a<0 のとき , 両辺に a をかけると, ④より, a×a>0×a すなわち, a^2>0
よって, 実数 a について a^2≧0 (等号成立は a=0)
(証明)
実数 a, b について, 次の4つのいずれかが成り立ちます。
1 a≠0, b≠0 2 a≠0, b=0 3 a=0, b≠0 4 a=0, b=0
a^2, b^2 について, 上記の証明より次の4つに大別されます。
1 a^2>0, b^2>0 2 a^2>0, b^2=0 3 a^2=0, b^2>0 4 a^2=0, b^2=0
1のとき, a^2>0 の両辺に b^2 を加えると, ➁より,
a^2+b^2>0+b^2=b^2>0
2のとき, a^2+b^2=a^2>0
3のとき, a^2+b^2=b^2>0
4のとき, a^2+b^2=0+0=0
1~4より, 実数 a, b について, a=0, b=0 のときのみ a^2+b^2=0 それ以外では, a^2+b^2=a^2>0 であることが分かります。
これらをまとめると, 実数 a, b について a^2+b^2≧0 等号成立は a=b=0 のときのみ であることが示されました。